婦人科内視鏡手術はより傷口が小さく痛みの少ない低侵襲治療として全国で普及しつつあります。当科におきましても腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術を積極的に行っております。以下に内視鏡手術の手術方法、メリット、デメリット、当院での手術実績、当科での手術の取り組みについてご説明いたします。
【手術方法】
手術は全身麻酔で行います。腹部に5~15mm程度の小さな孔をあけそこにトロッカーを呼ばれる筒を差し込み筒の中を小型カメラや鉗子という手術器具を出し入れし手術を行います。通常トロッカー(筒)を挿入するための傷が3~4か所必要になりますが当院ではより美容性を向上するために2カ所の傷で行う2孔式手術や臍1カ所の傷で行う単孔式手術も積極的に行っております。
【手術実績】
2012年は腹腔鏡下手術96件、子宮鏡下手術12件を行いました。(下記に の手術実績を示します。)近年、以前は腹腔鏡下での手術が困難とされていた子宮筋腫の核出(腹腔鏡下筋腫核出術)や子宮の摘出手術(腹腔鏡下子宮全摘術)も積極的に行い良好な成績を収めています。
当院で行っている内視鏡手術
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卵巣嚢腫 |
腹腔鏡下卵巣嚢腫核出術、付属器切除術
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子宮筋腫 |
腹腔鏡下筋腫核出術、子宮全摘術、子宮鏡下筋腫核出術
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子宮内膜症 |
腹腔鏡下癒着剥離術、内膜症病変焼灼術、子宮全摘術
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子宮外妊娠 |
腹腔鏡下卵管切除術、線状切開術(卵管温存手術)
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不妊症 |
検査腹腔鏡、腹腔鏡下癒着剥離術、卵管開窓術、卵巣多孔術、
子宮鏡下ポリープ切除術
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【内視鏡手術のメリット・デメリット】
メリット |
・傷が小さい(5mm~2cm) ・傷の数が少ない(1カ所~4か所) ・傷が目立ちにくい
・痛みが少ない ・入院期間が短い ・癒着が少ない
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デメリット |
・適応が限られる(すべての手術が可能なわけではない)
・手技に熟練を要する ・手術時間が長くなる傾向がある
・特有の合併症(トロッカー、鉗子による臓器、血管の損傷など)
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このように内視鏡手術は美容性、痛みの低減、入院期間の短さなど患者さんにとって多くのメリットがあります。一方ですべての良性疾患に対して手術が可能なわけではなく、また腹腔鏡特有の合併症、術中の出血の増加などによりやむを得ず開腹手術に変更せざるを得ない場合もあります。外来診療におきましてもこれらの患者さんのご希望、不安にお応えする丁寧な診療を心掛け、十分なご相談のうえ手術方法を決定していきたいと考えております。